なりそこない

なりそこない


「消えない。」



「消えないなぁ。」



「自分が抱いていない感情が、ずっと胸の中にある」



「そうかそうか、何でだろうな」



「何故、何故なんだ。」



「...何故だろうなぁ」



「...お前」



「その答え、案外分かってたりするだろ?」



「...」



「言いたくないだけで、さ。本当は見えてるくせに」



「...」



「俺と同じ、なりそこないだから。お前はずーっと、俺と同じなりそこないの肉塊なんだよ。」



「そんなはず...」



「反応できないよなぁ、うんうん。分かってる分かってる。」



「悪いと思ってるぜ?夢でしか俺と話さないことや、このことを毎回忘れさせることとか。あぁ、あと結局消されちゃうこととか」



「...」



「怖い話だよなぁ、受肉でもないのに。魂が同居したらこうなるんだな」



「...なら、出ていけよ」



「悪いけど、出ていけないなぁ。俺も、結局はあの家の人間ってことだからさ。」



「欲に従う、あの家の。」



「...どうして」



「言っても意味ないだろ?なりそこないに言ったって。」



「...僕は、お前じゃない」



「でも、俺はお前だ。そうなったんだから、仕方がないよな。」



「...」



「じゃ、冷たい現実に帰んな。また夢で会おうぜ。」



「...」

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